FTMの芸能人はなぜ少ない?海外・日本の有名人と社会的背景
はじめに|FTMの芸能人が少ない理由とは?
FTM(Female to Male)の芸能人は、MTF(Male to Female)と比べると圧倒的に少ない傾向があります。しかし、それは「FTMが芸能界で活躍できない」という意味ではなく、社会的認識や業界の特性、カミングアウトの選択によるものが大きいと考えられます。本記事では、その背景を深掘りし、FTMの芸能人の事例を紹介していきます。
FTMの芸能人が少ない理由
1. MTFとFTMの可視性の違い
MTFの芸能人は、バラエティ番組やエンタメ業界で早くから活躍しており、世間的にも認知度が高い傾向があります。
一方、FTMは「男性」として社会に馴染みやすく、カミングアウトの必要性を感じないケースが多いため、目立ちにくいのが現状です。
- MTFの可視性が高い理由
- バラエティ番組やトーク番組で「オネエ枠」として出演するMTFが多かった。
- ファッション・美容・エンタメ業界での活躍の場が多い。
- LGBTQ+ムーブメントの中で、MTFが目立つ形で先行してきた。
- FTMの可視性が低い理由
- 日常生活で男性として社会に馴染みやすい傾向にあり、あえて公表しないケースが多い。
- 芸能界で「トランス男性」としてのポジションが確立されていない。
- メディアがFTMのストーリーを扱うことが少なかった。
2. FTMのバラエティ枠が確立されていない理由
① FTMの方にとって、過去に関する話題はデリケートなものになりやすい。
- FTMの方の多くは、社会で“普通の男性”として認識されることを重視する方が多く、過去を話題にされること自体がセンシティブになりやすい。
- MTFは「オネエ枠」として確立されており、“元男性”というアイデンティティがバラエティの笑いに結びつけられている。
- しかし、FTMは「元女性」という話題をネタにすることがデリケートで、笑いとして成立しにくい。
② FTMのバラエティ的なポジションが確立されていない
- MTFは「オネエ枠」や「ニューハーフタレント」としてのキャラクターが確立され、テレビ業界にも受け入れられてきた。
- しかし、FTMには「FTM枠」と言えるものが存在せず、バラエティ番組での立ち位置が確立されていない。
③ “ネタ”ではなく”プライバシー問題”になりやすい
- MTFの方々が「女装やオネエキャラ」として自らネタにできることが多いのに対し、FTMのトランスジェンダーは「ネタにしにくいプライバシー」と見なされやすい。
- 「男として生きているのに、わざわざ”元女性”を強調するのは不自然」「本人が望まないなら話す必要がない」という認識が一般的。
3. “男性芸能人”として活動しようとするとアウティングのリスクがある
- FTMの中には、社会で自然に“男性”として暮らしている人も多く、容姿に恵まれている(いわゆるイケメン)、や芸能界での活躍に適した魅力を持つ方も多い。そのため、「芸能人」として活躍できる可能性は十分にある。
- しかし、もしFTMの方が「男性芸能人」として活躍した際、知名度が上がるほど **アウティングのリスク** が高まり、結果的にカミングアウトを余儀なくされる可能性がある。
- 例えば **佐藤かよさん** は、一部報道によると匿名のアウティングがあったとされ、事務所と相談しカミングアウトすることを決断したと言われている。
- これと同様に、FTMの芸能人が “男性芸能人として活動”した場合、どこかのタイミングで公表せざるを得ない状況になる可能性がある。
日本でFTMを公表している有名人
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莉犬くん(すとぷり)
人気音楽ユニット「すとぷり」のメンバー。
FTMであることを公表し、多くのファンに勇気を与えている。 -
SECRET GUY
日本初のFTMアイドルユニット。音楽活動を通じてFTMの認知を広めている。
海外でFTMを公表している有名人
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エリオット・ペイジ
映画『JUNO/ジュノ』でアカデミー賞にノミネートされた俳優。FTMであることを公表後、LGBTQ+の活動家としても活躍。
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アレクシス・アーキンズ
アメリカの俳優で、トランスジェンダーとして主要な映画賞を受賞。LGBTQ+コミュニティの支援にも積極的に関わる。
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チェイス・ストラング
トランスジェンダーのアスリートであり作家。自身の経験を通じて、トランスジェンダーの視点を広める活動を行っている。
FTMの認知拡大に貢献している団体や取り組み
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G-pit
性別適合手術のサポートや無料相談を行う日本の団体。情報提供や地域活動を通じてトランスジェンダーの理解促進にも力を入れている。
FTMの芸能人は今後増えていく?
FTMの芸能人が少ない理由には、社会的認識・業界の特性・カミングアウトの選択などが関係しています。しかし、LGBTQ+の認知が進むにつれ、FTMの有名人も増えていく可能性が高いでしょう。
また、最近ではSNSを通じて個人で発信することが可能になり、従来のテレビや芸能界に頼らずとも影響力を持つことができる時代になっています。そのため、今後はカミングアウトの有無にかかわらず、FTMの方が活躍する場が増える可能性があります。
FTMの方々がより自由に生きられる社会へと進んでいく中で、今後の変化に期待が高まります。